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Business Insider japan統括編集長/AERA前編集長 浜田敬子氏

Business Insider japan統括編集長/AERA前編集長 浜田敬子氏

元AERAの編集長として活躍し、4月からBUSINESS INSIDER JAPANの統括編集長に転職された浜田さんに働き方シフトと女性のリーダーシップについてお話をお伺いしました。

<プロフィール>
浜田敬子
Business Insider japan統括編集長/AERA前編集長

 1989年に朝日新聞社に入社。前橋支局、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、99年からAERA編集部。記者として女性の生き方や働く職場の問題、また国際ニュースなどを中心に取材。米同時多発テロやイラク戦争などは現地にて取材をする。2004年からはAERA副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。
 編集長時代は、オンラインメディアとのコラボや、外部のプロデューサーによる「特別編集長号」など新機軸に次々挑戦した。
 2016年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュースする。2017年3月末で朝日新聞社退社。2017年4月より世界14カ国に展開するオンライン経済メディアの日本版統括編集長に就任。「羽鳥慎一モーニングショー」や「サンデーモーニング」などのコメンテーターや、ダイバーシティーや働き方改革についての講演なども行う。

朝日新聞社からBUSINESS INSIDER JAPANに転職されたきっかけを教えてください。

AERAの編集長時代は部下にワーキングマザーが10人ほどいました。彼女たちに良いパフォーマンスを出してもらわないと良い雑誌が作れないので、彼女たちの働きやすい環境を作ることの優先順位を高くして、自分の働き方については後回しにしていました。
でも、AERAや朝日新聞で「働き方」を社会に問いかけている中で、自分の働き方はどうなのだろう?と考え始めました。仕事は常に800メートルの中距離走を走っている感じで終わりがなく、退職後の妄想ばかり膨らんでいた時期に「LIFE SIFT」の著者リンダ・グラットンさんと直接お話をする機会があったのです。
「退職後のクルージングもガーデニングも2か月で飽きる。長く働き続ける方法を考えること。ワークライフバランスは人生全体で考えた方がよい」というお話を聞き、自分自身の中での働き方、仕事のポートフォリオの組み方、人生全体の戦略、を考え直さなければならないと思いました。そんなタイミングで転職のお話をいただいたんです。ちょうど今年50歳。55歳になると環境を大きく変えるのは正直しんどいと思っていました。紙媒体からオンラインメディアになると覚えなければいけないこともいっぱいあり、転職をするなら最後のチャンスだと思いました。
あと、5年生の娘がいるので、会社に家から歩いてでも行けるし、すぐに帰ることができる環境というのも転職を決めた大きな要因の一つでした。

転職されて働き方は変わりましたか?

今はBUSINESS INSIDER JAPANの統括編集長をしながら、個人でのメディア活動もして、
さらに朝日新聞社とは業務委託で仕事を請け負っています。立ち上げたプロジェクトが軌道に乗るまでは、ということで。3足の草鞋を履いていて、忙しいですが、忙しさの質が会社員時代とは違います。会社から仕事を任されて忙しくなっているとの、自分の意思で取捨選択できる今の忙しさとでは、形だけ見たら変わりませんが、精神的に大きく違います。3足の草鞋をはくことで各々の仕事にチェンジするときに頭も心も切り替えることができるので、気分転換とブラッシュアップ、インプットになって好循環している気がします。働き方も仕事も「自分で選べる」ということがすごく重要だと思います。

本当に自分がどんな働き方をしたいのか見つけるためには何をすればよいのでしょう?

先週、シリコンバレーで女性の起業家を鍛える体験講座に参加をしてきました。そこで「日本人はマルチタスクをやることに追われていて、自分が何者で、何を大切にしていて、どんな価値観を持っているのか?を考える時間がない。毎日のTODOから自由になる時間を持ちなさい」というアドバイスを受けました。勉強しに行ったり人脈を作りに行ったりするのはDo。「よりよく生きる」などもっと広い価値観を考える時間をとることの大切を知りました。本当にやりたいことは何なのか?を時間に縛られないで、仲間と語り合うという時間をとることをお勧めします。

浜田さんは朝日新聞社時代も今の会社でも編集長というお立場でお仕事をされていますが、女性リーダーはどんな強みがあると思いますか?

女性はリーダーになれる素質を持っています。でも、自信がないんです。それは男性と同じやり方をしなければならないと思っているからです。男性と同じ必要はありません。私も最初は剛腕で大型広告をバンバンとってくる男性編集長を見て、「私にはできない」と思っていました。でも、実際に編集長を任せられると、目の前の課題をこなす必要があるので、必死になります。そのうちに「私は私のやり方でやればいい」と気が付いたのです。前でみんなを引っ張るのではなく、後ろから背中を押していくリーダーシップ。「今あなたがやっていることは正しい。足りない部分はここだよ。」と気づかせてあげるリーダーシップ。役員会での振る舞いが分からない、など細かいことで悩みもありましたが、周囲に相談をしているうちに「ふるまい方が分からないこと」が価値なんじゃないかと思ったのです。エイリアンのような存在で会議の暗黙の了解を壊していくことこそ、私が会社に出せる価値。今までと同じようなことをしたら、価値がなくなる、と思えたことは大きかったですね。過去の習慣にとらわれずに、自分らしいリーダーシップを見つけることができることが女性リーダーの強みですかね。

逆に女性リーダーが弱いところはどんなところなのでしょうか?

多くの女性リーダーを育ててきた私が感じている点として、女性が弱いのは「決断をする」ということです。みんなの意見を聞くのは得意だけれども、その後に優先順位をつけて、捨てることを決断するのは苦手な人が多いですね。
特に責任感が強く、丁寧なリーダーであればあるほど、自分で全てやってしまおうとするので、どんどん仕事が滞ってしまいます。「捨てるものを作って。人に任せて。優先順位をつけて」と女性リーダーを育てる時には良く言っていました。
女性が「決断する」のが弱いのは素質ではなく、単に決断の仕方を教えてもらえる機会、また決断を経験する機会がないことが理由だと考えています。
男性は数がたくさんいるので、わざわざ教わらなくても背中を見て伝承されていく気がしますが、女性はそもそものリーダーの数が少ないので、きちんと言語化して、共有する機会が必要だと思っています。「私はこうやっている優先順位をつけている、決断しているけど、あなたのやり方もいいね。」という場があれば、もっと女性リーダーは育つと思います。
スピーチやプレゼンも同じです。自分の思っていることを伝える場を経験していないと言葉で伝えられません。これも単に経験の差ですから、小さいグループやユニットで「決断して人を動かす」ことを繰り返していくと良いと思います。

Tristはすでに地域コミュニティの中でママたちが少人数のグループを作って自主的に勉強会やイベントを立ち上げて動き出していますが、これもリーダーシップを養っていると言えるのでしょうか

PTAでもサークルでも地域のコミュニティでも、何かを決断し、誰かを動かすという経験をどれだけたくさんしているか?が大切です。
Tristは自然と女性のリーダー養成所になっているのだと思います。
今は子どもが小さいから、地元に仕事を持ってきて働いていますが、子どもが大きくなったら、リーダーがいない会社に逆輸入されると面白いですよね。Tristで培ったリーダーシップを丸の内に持っていく、みたいな。スタートアップ塾に行くよりもTristで実践する方がリーダーシップは身につく気がします。
どうやったら人って成長できるのか?リーダーになれるのか?地域の価値観の違う人たちをどう巻き込むか?Tristでのリーダーシップ経験は世界で通じます、と言えるプログラムにしていくと良いと思います。
テレワークで仕事をしながら、人材として磨かれて行き、また違うキャリアを作っていけるとなるとすごいことです。
「Tristをあなたの地域で作るために」というプログラムで、日本各地でTristを立ち上げながらリーダーシップを養っていけたら、とても良い仕組みになると思います。