Trist

乳がんで仕事を退職。そして開業へ。AZ行政書士事務所 福田有紀

●Tristとの出会い

「Tristかぁ…ママさんたちのコミュニティスペースみたいだし、私には無縁だな…」

行政書士事務所をオープンするために個室のあるレンタルオフィスを探していた私。ネットでTristを知った時、正直「子供のいない自分には関わりのない場所」と思いました。それがまさか、その2ヶ月後に自分が入居しているとは…人生って分からないものですね。

●私と仕事

大学になんとなく通って、なんとなく卒業した私。世の中はバブル崩壊直後で超就職難でしたが、ただでさえ目標も何もなかったので、ガムシャラに就活することもなく、ちょこっとフリーターを経験した後、ご縁があって独立系のソフトウェアハウスに就職しました。今思えば、ラッキーだったとしか思えません。そこでは、当時不足していたプログラマー養成のため、人材開発部門にて社内研修の企画や運営・講師などを担当しました。仕事は面白かったのですが、何しろ目標も何もない私。約7年働きましたが、結婚を機に退職し、流山に移住しました。

しばらく派遣社員にて大手総合研究所の取締役秘書などやったこともありましたが、結局派遣社員の仕事に満足できず、地元の商社に正社員として再就職しました。そこでは、実装基板のテスター用部品をドイツから輸入・販売する営業事務を担当していました。仕事は常に忙しかったですが、家からも近いし、人間関係も良かったので、ここで骨を埋めるのかなぁ…なんて漠然と思っていました。

●青天の霹靂

そんな時、自分が乳がんであることが分かりました。それも、ステージ3。リンパへの転移もみられたので、手術だけではダメで、抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン治療とすべてやりました。「青天の霹靂」とはまさにこのこと。治療を受けながら仕事も続けていましたが、心と体のバランスがうまくとれなくなり、結局は仕事も辞めてしまいました。

●自分らしい生き方

たぶん、私と同じような状況になると、ほとんどの人が間違いなく「人生を振り返る」と思います。人生を振り返って、「あの時あれをやっておけばよかったな」とか、「もっと頑張っておけばよかったな」とか、ほんとに後悔ばかりでした。でも、ひとしきり後悔した後、私は自然と前を向いていました。きっと、後悔している時間はなかったからだと思います。神様からもらったこの「余生」で自分が何をやりたいのか…考えた結果、私が出した答えは、「誰かのために、何かのために働きたい」というものでした。

理由は、ずっと働いてきて働くことで充実感を得られたこと、そしてもう1つは、子供を最終的に諦めることになったからです。子供を諦めるということは、自分の存在意義の1つを奪われるような、そんな絶望感を味わいました。

それでも、私は生きていかなければなりません。

それならば、最後ぐらい誰かのために、何かのためになるような仕事がしたいと思い、一発奮起して行政書士の資格を取得しました。今、私が笑っていられるのは、この「夢」があったからだと思います。今まで目標もなくのほほんと過ごしてきた私ですが、今やっと「自分らしく生きている」と実感しています。

●ガンとの共生、そして開業へ

医療の発達とともに、ガンは決して「死」を待つ病気ではなくなってきました。そして、今後国民の2人に1人がガンにり患すると言われています。これからは、「ガンと共にどうやって生きていくか」を考えていかなければならない時代になってきました。世の中では「ガンになっても仕事を辞めないで!」と簡単に言いますが、そんなに簡単なことじゃありません。肉体的にも精神的にも、一般企業で働き続けることはとても難しいと思います。もし、会社で働き続けることが難しいのであれば、働く方法として「起業」という選択肢があることを伝えていきたい。ガンになったからこそ、自分らしく、楽しく生きる方法を見つけてほしい。そんな想いを基本理念に、夢の実現をお手伝いするパートナーとして、創業支援を中心に行う行政書士事務所を開業します。そして、最終的には、自分の体験も交えながら、「ガン患者のための創業・就業支援サロン」を開設したいと思っています。

●ご縁

冒頭でも書きましたが、今自分がTristに入居していることが本当に不思議です。正直、T入居するまで、「Tristの人たちは勝ち組で、私は負け組」といった”やっかみ”が少しあったような気がします。だって、彼女たちは子供も手に入れ、仕事も手に入れているから…。でも、入居してみて、色々な人と出会い、話をしていくうちに、「負け組とか、勝ち組とかじゃないんだな」と思うようになりました。状況は違っても、みんな何かに悩んでいて、それを克服しようと頑張っているのは同じだと思いました。私が手助けすべきなのは、決してガン患者だけではない…今はそう思っています。

Tristと私の出会いは、自宅住所が事務所として使えないという理由で、商工会議所から紹介して頂いたのがキッカケです。出会いは偶然ではありましたが、私にとって「良いご縁」であったと思っています。そして、周りの方にも私との出会いが「良いご縁だった」と思ってもらえるような、そんな仕事をしていきたいと思っています。